キッチン事情最近の住宅設計打ち合わせは、ご夫妻がそろい、週末や時には平日深夜までというのも珍しくない。打ち合わせの大半はわが城の外観をどうするか、で費やされていく。ところが、その後の一年点検でうかがうと、問題点の多くは家の内側に移っている場合が多い。とりわけキッチン。ここは「主婦の城」にとどまらず、内容次第では食生活の将来や家庭運営をも左右しかねない。
本紙元旦号の「沖縄伝統料理に欠かせない昆布の消費量が、今や全国十位に落ちた」との記事が気になる。並行してファストフード店や弁当、惣菜店利用などの食の変化が起きており、長寿県の将来を危惧する内容であった。 美しいキッチンもいいが、例えば現代風の「土間」が併設されたキッチンなら、昔井戸端でやった大量の「結び昆布」やムーチーの「サンニンの葉」をごしごし洗えそうだ。
一方、1980年代に北イタリアで始まった「スローフード運動」は、日本でも確実に根付いており「伝統食材、料理、素材生産者を守り子供たちに食の教育を進める」と、日本スローフード協会の国本理事長は語っている。手軽な外食や中食に流されず、家庭料理や伝統料理をきちんと伝えるためにも、わが城におけるキッチンの在り方は重要だ。
キッチンは、高額商品が、すなわち良品ではない。いかに大量の調理であろうが支度から後片付けまで難なく出来、かつ、室内汚染も少なくストレスのない物が望ましい。また、機能一辺倒でない遊び心も欲しい。
外側から「立派」に見える家よりも、中で暮らす人たちの「生活の質」を一緒に考え、設計提案をしていきたい。
(菅原 律子/菅原律子設計事務所代表)
2002/02/02(琉球新報掲載分)
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